「飛び切り美味い、焼き肉屋へ行ってきた」の巻、中編。
店の名前は、「肉の鈴木」。
店は東京メトロの浅草駅から、徒歩で十分強の位置にある。
この日の私たちの予約時間は、十八時~二十時。
それがわかっていながら駅に着いたのは、予約の十分前だった。
頑張って歩けば間に合うかもしれないが、折角の浅草。
早足で歩くのは野暮というものだ。
浅草の街を歩くのは楽しい。
雷門、仲見世、浅草寺…。数ある名所を抜けていく。
ひこ棒も楽しいらしい。持ち前の笑顔が、さらに微笑んでいる。
言ってくれれば、何か買ってやりだいが、
それを強請るような娘ではない。
言問通りに出た。
目的地は通りを挟んだ向こう側にあるが、
ここ迄くると、街の風情がかわる。
どことなく玄人っぽい。芸姑さんでも歩いてそうな雰囲気だ。
いつか女房でも連れて来てやれればよいが…。
店に着いた。独特の入口だった。
入店すると我々の予約席には、すでに火を入れてくれていた。
この意外な展開に、確信犯的に遅刻したことを悔いる。
座敷に通されると、そこは掘り火燵のような席だった。
振り返るとひこ棒が、私の靴を揃えてくれている。
ありがとう…。思わず口に出る、私。
後編へ続く。