吉右衛門の営業日誌、これが豆腐屋だっ!の巻。


私の趣味はへら鮒釣り、野球観戦、それに営業です。

へら鮒釣りと野球観戦は、これからの人生いつでも出来ますが、

営業は再来年夏、還暦を向かえるとともに鞄を置くつもりなので、

其れ以降は出来ません。

故に泣いても笑っても、残り2年間しか出来ない営業に、

今は、全力投球をしています。

そして、これから記す事は、

飛込み営業で生きて来た老兵が書く、最後の日誌です。


2011年07月26日。

埼玉県の秩父に営業先があるとの情報を仕入れ、向かう。

助手席に座らせるのは、我が営業人生最後の部下の、恩田スミレ。

9時半、

今年から数年ぶりに再開した飛込み営業だが、

残念な事に、まったく成果が出ていない。

其処で、今日こそはと気合いを入れて、いざ出陣。

経路は竹橋から突入し美女木、大泉を経由して関越道を西下する予定。

長い車中、四方山話をしながら向かうが、どうも途切れがちに成る。

沈黙が長く成ると、今日の営業を想像して緊張が過ぎてしまうので、

隣のヤツに、「オイっ、歌でも歌え!」と命令調で言うと、

いつもは知らん顔をして外の景色を眺めているくせに、この日は

「いいんですか、じゃあ人生いろいろを歌うので、

お客さん手拍子をお願いします」だって……。

えっ、お客さんってオレの事か……?。

然し、手拍子を頼まれても運転をしてるから手を離せるわけがない。

でも、折角だから、大きな掛け声で

「スミレッちゃん!」と言ってやると、

歌詞をなぞるように歌いだした。


お粗末さまでしたあ。

頬をマゼンタ色に染めるスミレちゃんに、

パチパチパチパチパチパチッ!

思わずハンドルを離して大拍手をおくった。

これだけ艶っぽく歌ってもらえると

天国の浜口倉之助先生や中山大三郎先生も、さぞやお喜びだと思う。

そして更に思う、コイツは若くて大した苦労もしていないのに、

何でこうも情感的に歌えるのだろうか、と。


11時半、

現地到着。普段は緊張で震えるのに、

さっきの歌が効いたせいかリラックスして、

飛込み営業に突撃……無事終了、上手くいった。

そして、間を置いた2件目も上々の出来で、終了。

今回は次回への足がかりも確保できたし、満足満足で一件落着。

いつものようにスミレに、

「今日のオレの営業の、あがりどうだった……?」と尋ねると、

「ううん、まあまよかったかな」だって。

この野郎、評論家になったつもりでいやがる。


14時、

いつもそうだが、スミレを連れて行く時には、

必ず営業先の詳細な下調べと食い物屋を調べさせておく。

そして今日行く所は、人気の豆腐屋との事。

ナビゲーションを操作して到着してみると、成るほど結構な佇まい。

如何にも、これが豆腐屋だっていう感じ。

入店すると14時だと言うのに、満席で待合いで待つ事に。


これはお店の、渋い正面図。

メニューはこれだけ、豆腐定食。

中央にあるのが名物のざる豆腐、相当に旨かった。

デザートの、何か(忘れた)と豆乳。

地場の飲料水、秩父サイダー。

艶歌のうまい、恩田スミレ。


今日は営業が上手くいったし、旨い豆腐も食ったし、

もう1件寄ろうと天然の氷屋に行ってみたが何と、2時間待ちとの事。

それでも、折角来たから待とう、と言ったら彼女に言われた。

「オジちゃん、帰りは天城越えを歌ってあげるから、もう帰ろう」、と。

ハイハイ、そうしましょう。


お仕舞い。


吉右衛門。


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