2013年4月3日 のアーカイブ

ライムライトの巻、後篇。


2011年。

恋いこがれていた、営業の年が明けた。

自信満々で、鼻息も荒かった

飛込み営業で生きてきた、小さな自負がその自信を支えた。

彼女に、「これが営業だ!」と言うのを見せるつもりもあった。


初夏。

大きな災害に見舞われて開始が遅くなってしまったが、

勇躍してことに挑んだ。

連勝街道を突っ走るつもりであった。

大概の事は幾度の経験で育んだ戦術で、なんとでもなると思った。

然し、日を重ねるごとに雲行きが怪しくなってきて、

相手が、金城鉄壁にみえてきた。

オレに、この城壁は登れるのだろうか…。

曾ては悠々と跳躍できた壁が、途轍もなく高く見えてきた。

それでも突撃をやめることはなかった。

意地と執念が萎える心を押さえつけたのだ。


秋。

病に伏してしまった。

こんなときに…。

臍を噛む思いであったが、どうにもならなかった。

無念であったし、泣きたかった。

そんなどん底を味わっているとき、彼女が私を支えてくれた。

幾度となく病室にもらったメールにはこう書いてあった。

「よくなったら、また営業にいきましょう」

「レセプションに招待されました。退院したらいきましょう」

有り難かった。

かけがいのない部下をもてたと思った。

そう思うと荒んだ心に安らぎが生まれ、

落ち着きを取り戻せてきた。

暫く復帰は出来そうにないし、彼女に頑張ってもらおう…。

賭けでもあったが、そうするよりほかはなかった。

しかし、瓢箪から駒が出たといえば失礼になるが、

病室に吉報が届いた。

調布と昭和島への彼女の営業が成功したのだ。

災い転じて福と為す、とはこの事だと思った。

これは、あの尾張から二年後の事であった。


時は流れて、今年の1月25日。

帰宅中の私のiPhoneにメールが舞い込んだ。

彼女からであった。

「メリーゴーランド展のサンイもらいました」

この簡潔なメールに込められた思い。

シャイな彼女は、嬉しい時ほど控えめな表現をする。

そしてこれが、

「オーディションを勝ち抜いきました」とみえて仕方がなかった。


お仕舞い。


2013年04月03日、


吉右衛門。


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