吉右衛門へら鮒釣り2011

  ◎第七回釣行
08月26日(月)

笹川湖。
道の駅下。
レンタルボート笹川。
曇天、無風、凪。
気温/26度、水温/28度、水色/澄み、減水/2.4m。 

「笹川湖で巨べら釣り」の巻。

笹川湖は別称を片倉ダムとも称して君津市の東端に位置する。
水系は小櫃川に属し、亀山湖の上流にある多目的ダムだ。
三島湖・豊英湖との位置関係は、両湖のほぼ東側にあり、標高は笹川湖の方が高そうにみえる。
序でにアクセスも記すと、館山道の君津ICから三島湖街道を東南の方向に走ると東粟倉の交差点に出る。ここで街道とは別れ、房総スカイライン有料道路を登坂すると、笹川湖に行きつく。
今回はこの笹川湖を釣行先として選んでみた。未踏のダム湖だ。
その理由は、浮き世のしがらみにある。
大手取引先の御担当者がよくこの湖の話を聞かせてくれる。
その方の獲物はブラックバスだが、話術の巧みさにも魅了され、いつか自分も行ってみようと思った。それに釣行すればより話が理解できるし、自分からも話題が提供できる。
更に最近釣りを始めた長男も、この担当者に連れられ、ここでブラックバス釣りに興じているという。
しかし、ここを選択した理由のはそれだけではない。あまり詳しくは語れないが、いくつかの釣り場を下見して決めたのだ。

笹川湖に決めたのはよいが、厄介なことがふたつあった。
先ずはここを訪れる釣り客のほとんどが、ブラックバスを狙いにきていることだ。彼らとは三島湖で呉越同舟するが、かつて不快な思いをしたことはない。それは三島湖がこの釣りを禁止しているのに加え、彼らが少数派というのもあるだろう。しかし、笹川湖は違う。その勢力図が百八十度逆転する。それがどのような事になるのかわからないが、トラブルだけは避けたいと思う。
次に魚影は薄いが、釣れる魚が大きいことだ。
魚影が薄くて釣れないのは、いつものことでへっちゃらだが、大きいのは初めてだ。
壱尺伍寸も釣れるという。
自分は「巨べら釣り」など、別世界の事と決めつけていたから、技術はもとより何の知識もない。
そこで出発にあたっては、いつものようにサンスイ釣具店さんのお世話になった。市販の製品に鉤素付きの大きな針がないことから巻いてもらい、浮子から餌の類いまで揃えてもらった。
こうして俄揃えとはいえ、準備だけはできた。
明日は決行の日。
物見遊山でもいいから、楽しんできたいと思い、床についた。
午前三時に目が覚める。今日は、初めて笹川湖に行く日だ。
オレは新参者。この日くらいは店の出舟時間に行きたいが、頼りない体力と明日からの仕事を考えるとそうはいかない。そんなわけで二度寝をして出発すると、到着したのは七時前だった。
草鞋を脱いだのは、予め電話をしておいた、レンタルボート笹川さんだ。
大旦那がいらしたので挨拶をすると、湖面図のコピーをもらい説明を受けた。本湖も川筋も日陰の方が釣れているという。そのうち若旦那も戻られ、壁面に貼られている大型の写真と地図からも細かな説明をしてくれた。
壁面をみると巨べらを釣り上げた写真が、一面に飾られている。
どの顔も得意満面だ。
「どんなもんだいっ!」とでも言っているかのように見える。
オレにあんな大きな魚が釣れるのだろうか…。

午前七時十五分。
レンタボート笹川桟橋。
出航。
闘志が漲るというよりも、何処に行ってよいのかさえもわかっていなかった。
まあ、なんでもいいや…。
あてもなく、桟橋の裏側にある上流へと漕ぎだした。
※地図は文末に掲出。
ゆっくり漕いでいると、本湖の方からへら師が移動してくるのがみえる。あちらは船外機を装着しているから、その差が縮まるのに時間は掛からない。追いつくと並走してくれ、いろいろな話を訊かせてくれた。
とても面白い釣り場だということ。
数は出ないが、壱尺伍寸以上が釣れること。
いつもモジリを探してから場所を決めているが、今朝は何もないこと。
ダムが完成から十年と若く、水中の立木が崩れていないこと。
水中に隠れている立木は、竿を入れてみないとわからないこと。
半べらが多いこと。等など…。
話に耳を傾けていると、舟は事務所の裏手の川筋まできた。
日陰側がよいというので入釣場所を物色していると、すでに竿を振っている方がいる。その並びに入ろうとしたが減水の影響で、岩盤と土肌が露呈して適当な場所が見つからない。
しかし、以前、この釣行記の掲示板で、へらじいさんがこんな時のためにと、ペグとトンカチの携帯を勧めてくれたので、今回は持参している。
貴重な助言を有難う御座いました。
こうして舟を進めていると、小さな凹がありその隣の突端に陣を張った。

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本日の入釣場所の、正面図。

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道の駅下付近の鳥瞰図。
赤のイラストが入釣場所。
帰りに橋の上から撮った。

午前七時四五分。
ここは、「道の駅下」というのではないか…。
よくはわからないが、舟を結び準備を始めた。
巨べらが相手とあってか、用意してくれた道糸と鉤素は太く、針も初めて目にする大きさだった。そして、普段は道糸と鉤素の接合部に噛ませるクッションの穴にも、太い鉤素で結んだチチワを通すことが出来ずにいた。
浮子のバランスも難しかった。
いつも、か細いグラスムクトップを使用しているだけに錘の分量がまるで違い、随分と時間を掛けてしまった。
餌は配合に戸惑った。
マッシュ系の「尺上」が、粉より水の分量が多かったからだ。
しかし、よく考えてみればマッシュと麩では比重も密度が異なるのだから、これは当たり前のことだろう。
いつもと勝手が違い、準備万端というわけにはいかなかったが、どうにか格好だけはつけてみた。

◯本日のデータと予定。
・目標/浮子を動かすこと。
・竿 /朱門峰嵐馬、14尺。
・浮子/萱製、太パイプトップ(名称無し)。
・道糸/2号。
・鉤素/1.2号、350粍+450粍。
・針 /巨ベラ16号。
・棚 /二本半~一本半。
・餌 /尺上+藻べら+グルバラ。
・納竿/15時。

午前九時十分。
巨べらが棲息する湖での釣りが始まった。
無理は承知だった。
自分のような未熟者が手を出す釣りでないことは、十二分にわきまえている。しかし、ビギナーズラックなる都合のよい言葉もあるし、物見遊山と後日の話の種作りで竿を出す。
棚は根拠はないが、二本半にしてみた。
餌は親指の先程度にしたかったが、それだと浮子がその重量に堪えられずに水没する。どうやら尺上の比重が大きいようだ。そこでトップが一節程度残るような大きさにつけ直してみたが、その餌もバンバン打つのか、じっくり待つのか、わからなかった。
なにもかもが暗中模索の状態だが、六十分が経過したあたりで、一節だけ残しておいたトップの橙色が、フッと水中に消えた。
これは意外だった。
最悪、浮子が動かないことすらも想像していたからだ。
やがて、この嬉しい誤算が断続的に続くようになったが、合わせようにも浮子の動きに力感がない。それに動くのは沈下運動の終了間際だけで、落着くと、その動きはやむ。
魚種は何だろう…。
朝、釣り舟屋さんからもらってきた湖面図に記してある魚種は、ブラックバス、ヘラブナ、ワカサギ、コイ、ニジマス、ウグイ、オイカワ、とある。
犯人と疑わしきブルーギルの名が記されていないが、どうも怪しい。しかし、前回の西川淵でもブルーギルと決めつけていたら、へら鮒だった。それに何よりもそう思っていないと、夢がない。
また、餌の溶解が始まると浮子の変化がやむのは、何故だろう。
もしかしたら、針が巨大なので餌が溶け出すとそれが露呈して、罠であることが魚にバレているのではないか。
疑問を解き明かすべく、釣りに集中していると、ツンっ!。
小さいながらも待望の力感ある魚信があった。
しかし、合わせるも一瞬にして、バレてしまった。
今のは、へら鮒だったのだろうか…。
一瞬とは言えそれなりの手応えだったから、いわゆるジャミとは思えない。とすると、半べらか…。
それならそれでよかった。
オレには、へら鮒とま鮒の合の子を拒むものは何もない。

正午。
本日ただ今の釣果、零。
巨べらとおぼしき、バラシが二回。
そうなのだ。あれから、もう一度バラしたのだ。
浮子をぼやかすように動かしているのは、ジャミに相違ないが、そのジャミの中に、へら鮒は混在している。必ず、いる。
仕留めてやる!。
物見遊山で始めた釣りが、真剣勝負となった。
そんな時だった。
落込みでトップが数節動いた。
しかし、不意をつかれて手が動かない。
もう一度動いた。
今度は、手が硬直して動かない。
餌はまだついている。
今度動かしたら、必ずや仕留める。
グリップを握り直すと、ズルっ!。
期待通り、浮子が動いた。
透かさず合わすと、ゴツンっ!
凄い重量感だ!。
魚は左へと走った。
しかし、あっさりと、バレた。
その瞬間。空を舞うはずの、浮子がなかった。
へたりこんだ。溜め息というよりも気が抜けた。
やがて、どうにか、おちつきが出てきた。
道糸を切られたのだろう…。そう思って竿を手繰ると、糸が切られたのではなかった。穂先の金属が剥き出しになっていた。リリアンも含めて、仕掛けを根こそぎ持っていかれたのだ。
こんなこともあるのか…。
それにしても、とても歯が立たないと思っていた、巨べらが直ぐそこにまできていた。悔しかった。
残念無念だった。
しかし、予備の持ち合せはないし、あきらめるしかなった。
撤収を始めると、ぷかりと浮かんでいるものが、遠くに見える。
あれはオレの浮子だ…。
動いてはいないようだからか、魚はハズレたのだろう。
あれを回収して帰ろう…。そう思ったとき、ハタと気づいた。
竿袋に十二尺があるのだと。

十三時半。
敗者復活戦が始まった。
どうしても魚の貌がみたかった。
浮子を回収するのに、バシャバシャと水面を掻き乱した。
仕掛けを作り直すのに、ロスタイムも長かった。
しかし、それでも、なんとかしたかった。
今日がダメなら、明日も来たっていい。
執念のようなものまでもが生まれた。
夢中になると、時の経つのは早い。
六十分が経過した。
朝桟橋を出る時、十五時頃に戻る、と言ってきたが、帰舟時間は何時だろう。問合わせると、十七時、なる答えが返ってきた。
片付けの時間も考えると残りは、九十分しかない。
最後まであきらめずに頑張るぞ…。
餌を作り直して投じると、浮子が動いた。
動きからして、へら鮒だと思った。
今度こそはと思うと、動悸を感じ、腕も硬直した。
ふるえるものがあった。
次の動きで仕留める!。しかし、動きはなかった。
肩すかしを喰って、仕切り直しとなった。
慎重に餌を投げこんだ。
ごくりッ、生唾を呑む。
日常では滅多にない緊張だ。
トップが沈んでいく。
それを目で追っていると、ズンっ!。
浮子がこつ然と姿を消した。
しめたッ!。
腕を前に突き出すと、ガツンっ!。
痺れるような衝撃が走った。
二度とヘマはやらない。
沖に走るのを待ってから魚を寄せ始めた。魚は姿を現した。
どうやら、へら鮒で間違えはなかった。
数分は掛かったであろうか。
差し出した玉で掬った魚は、大きかった。
尺の玉から、しっぽが大きくはみ出していた。
やったぞーーーっ!!!!。
大興奮で発した快哉は、バス釣りの青年達が驚くほどであった。
計測した結果は、壱尺四寸四分。
壱尺伍寸には、六分足りなかった。
巨べらの定義が壱尺伍寸以上であるならば、これは、巨べらではない。巨べら足らずだ。
しかし、そんなことは、どうでもよかった。
凄い満足感に満ちあふれた。
執念で勝利を掴み取ったような気分だ。
そして記念写真を撮り、魚を放流。
気分が落着いたところで、一件落着。納竿と相成る。
オレは釣技に大きな劣等感を抱いている。
そのオレが、仕留めた!。これは快挙であった。
今日は釣りだけでなく、人生にも自信を持てた一日であった。

お仕舞い。

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計測結果、壱尺四寸四分。

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渾身の一枚ポーズ

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本日の入釣場所の、地図。
原図には、Googleを使用。

○本日の釣況。
・09:10~12:30、14尺/零枚、両団子、
・13:30~14:45、12尺/一枚、両団子。
・合計 一枚。

○2013年データ。
・釣行回数/七回
・累計釣果/50枚。


2013年09月07日(土) 。
吉右衛門。



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